• 検索結果がありません。

小型レーザープリンタファンレス化技術の開発 | Ricoh Technical Report No.38

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "小型レーザープリンタファンレス化技術の開発 | Ricoh Technical Report No.38"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

小型レーザープリンタファンレス化技術の開発

Development of Fanless System of Small Laser Beam Printers

清水 義威

*

内田 量之

*

岩崎 一也

**

林 瑞琦

***

近藤 和芳

****

Yoshitake SHIMIZU Kazuyuki UCHIDA Kazuya IWASAKI Ruiqi LIN Kazuyoshi KONDOH

要 旨 _________________________________________________ リコーはレーザープリンタにおいて,小型化・静音設計・消費電力低減を掲げている.その達 成手段としてファンレス化があるが,ファンを無くすことによる機内温度上昇を,自然対流によ る排気の最適化で抑制することが必要となる.その課題の解決策として,稼動時,待機時の機内 熱解析シミュレーションを使い,及び気流・水蒸気の流れを制御した.その結果,リコーレー ザープリンタ初のファンレス化を実現できた. ABSTRACT _________________________________________________ Ricoh challenges to make laser beam printers more compact, silent and energy-saving. One of the promissing approach is to adopt the funless system for cooling of the printers, but it requires the optimization of flow of the hot exhaust air by means of natural convection. We applied the thermo-fluid simulation to the control of the air and vapor flow, and found that the analysis is powerful enough for the flow optimization. Based on the analysis , the first funless laser printers in Ricoh was put on the market.

* プリンタ事業本部 大阪開発センター

Osaka Development Center, Printer Business Group ** MFP 事業本部

MFP Business Group

*** リコーイメージングテクノロジー(上海)有限公司 プロダクト開発センター Product Development Center, Ricoh Imaging Technology (Shanghai) Co., Ltd. **** プリンタ事業本部 GT 開発センター

(2)

1.

背景

1-1 開発の狙い 小型化・静音設計・消費電力低減はレーザープリン タの設計において重要な目的であり,このため,他社 においても,ファンレス化開発を実施している.リ コーとしては上記の目的に加え,機械高さを低くした いためにストレート(一直線)用紙搬送経路構成(Fig. 1参照)を選択している.それ故に①作像部に熱が伝わ りやすい,②書込み(レーザーユニット)部に水蒸気 が流れ込みやすい,といった新たな課題を有している. これらの課題を解決するために,①熱シミュレーショ ン解析による気流の最適化,②小型湿度計を用いた水 蒸気流れの最適化を実施することにより,短期間でこ れらの課題解決に取り組んだ.

Fig. 1 The sectional view of a laser beam printer with low height (Ricoh Aficio SP 100SF).

1-2 従来技術 他社の代表的なファンレス機としては,モノクロ機 では富士ゼロックス社のDocuPrint P200 b, キヤノン 社のSatera MF4420n/MF4410, カラー機では, A4機で, キヤノン社のLBP5050, A3機では富士ゼロックス社の DocuPrint C3050が上市されている.いずれも熱の通 り道のコントロールをしているが,定着部が書込み部, 作像部とほぼ平行に配置されているマシンは無く,定 着部がマシン上部に配置されている.

2.

熱シミュレーション解析

2-1 温度上昇抑制の考え方 定着器からの排気熱を利用した自然対流による熱排 気流路を構成し,待機時に定着待機熱による機内温度 上昇を抑制する. 特に,連続印刷後待機時の最悪条件(飽和温度)を 想定し,各部の開口・隙間を最適化することで目標温 度を達成した. 2-2 解析方法 2-2-1 手順 (1) 初回レイアウトでの検証 構想レイアウトから解析用モデルを作成して,待 機時を想定した熱解析シミュレーションを実施し た.特に定着器周辺の気流及び周辺部品の温度を 確認した. (2) 対策反映レイアウトでの検証 (1)の結果で得られた問題点の対策を解析用モデル に反映し,その効果を定着器周辺の気流及び周辺 部品の温度の比較により確認した. (3) ユーザー使用時レイアウトでの検証 ユーザー使用時は前カバーがオープン状態であり, その状態を想定し解析を実施した. (1), (2)と同様の 検証を実施し,定着器周辺の気流及び周辺部品の 温度を確認した. 2-2-2 解析ツール 解析ソフト: FloEFD 9.1.0 (3D熱流体解析ソフト) PC: HP/dc7800SF

CPU: Core 2 Duo, 3GHz OS: Windows XP 64bit

(3)

2-2-3 初回モデル作成 Fig. 2のように,構想レイアウトから解析用モデル を作成する.このレイアウトの特徴を以下に示す. (1) 本体フレーム底面に吸気口を形成 (2) 本体フレーム,定着入口ガイド間に空隙を構成 (3) 定着とオールインワンカートリッジ(AIO)の間に遮 熱板を配置 (4) 本体前面外装カバーに排気口を形成 (5) 排紙カバーを閉めた状態においても排熱可能とす るため,外装カバー,排紙カバー間に空隙を構成

Fig. 2 The layout around the fixing assembly. 初期温度:32℃ 発熱条件:待機状態を想定し,定着ローラを待機時定 着温度である160℃, 加圧ローラを100℃一 定に設定 材料設定:部品を金属,樹脂の2種類に分類しTable 1 の値に設定

Table 1 Thermal conductivity of parts.

部品 熱伝導率(W/m・K) 金属部品 71.2 樹脂部品 0.13 2-3 結果 2-3-1 初期レイアウトでの検証結果 初期レイアウトによる解析によって得られた温度分 布および速度ベクトルFig. 3を示す.この図より以下 の点が明らかとなった.

Fig. 3 Temperature color map and velocity vectors of an air flow in the initial layout.

(1) 定着器からの排熱がオールインワンカートリッジ (AIO)周辺に回り込み温度が上昇している. (2) 排気口周辺で熱の滞留が発生している この結果より排熱の回り込み,排気口付近の滞留の 要因は,いずれも流路が狭く狙いのエアフローを得る ための流量が得られていない,また,排気口付近につ いては定着上方のステー部材と外装との隙間について も改善が必要と判断できた.

(4)

2-3-2 対策レイアウトとその検証結果 前節の結果をもとにFig. 4に示す①~④の各箇所に 対して,以下のような対策をとったレイアウトを用い て再度シミュレーションを行った. ①定着入口ガイド~本体フレーム間の空隙拡大 定着入口ガイド板の上流部をカットし,本体フ レーム間の空隙を拡大した. ②定着カバー~遮熱板間の空隙拡大 遮熱板をAIO側に移動,定着カバーにR追加 ③外装カバー,排紙カバー間の空隙 排紙カバー形状変更 ④ステー,外装間の隙間 ステーを延長し,外装との隙間を閉止

Fig.5 Temperature color map and velocity vectors of an air flow in an improved layout.

Fig. 5の結果から対策反映によりFig. 3の初期レイア ウトと比較して,排熱の回り込み,排気口付近の滞留 が改善され,機内温度が低減されていることが確認で きた. 2-3-3 ユーザー使用時レイアウトでの検証結果 ユーザーが使用している際は,排紙カバーが開いた 状態での待機がほとんどであると想定される.よって, 排気口周辺の形状改善によりさらなる機内温度上昇抑 制が期待できると考えられるが,これについても確認 した.

Fig. 6 Temperature color map and velocity vectors of an air flow during the actual utilization. Fig. 6に示した結果より,排紙カバーが開いた状態, すなわち遮蔽物がなくなった状態では,排気口での滞 留がなくなったほか,定着入口部での滞留もなくなり 排熱の回り込みが解消されていることが判る. 2-3-4 シミュレーション値と測定値の比較検証 上述2-3-3のシミュレーション値とRicoh Aficio SP 100SFのマシンを使用して,機内にサーミスタ設置し た場合の実機測定温度との比較検証を実施した. 実測値の測定条件は,室温にて連続印刷後の飽和温 度を測定し, 32℃換算した値をTable 2に示す.

Table 2 Comparison of objective, simulated and measured temperatures. 温度 目標値 シミュレーション値 (32℃換算)測定値 前カバー (気流出口) 85℃ 77℃ 75℃ オールインワンカートリッジ 廃トナーケース側 60℃ 51℃ 59℃ 書込み反射ミラー 50℃ 40℃ 50℃ シミュレーション結果によれば,排紙カバー開放状 態での待機時機内温度は,目標値に対してマージンを もっている.同時に実機検証結果の各部の温度も目標 値を達成できていることが判った.書込み反射ミラー, オールインワンカートリッジ(AIO)の測定温度がシミュ レーション値に対して高いのは,それぞれの駆動によ る自己発熱分が加わったからと推定される.

(5)

3.

水蒸気流れ解析

3-1 水蒸気による問題発生の説明 定着器に紙が通過する際,少なからず紙は水分を吸 収しているため定着器の熱によって水蒸気が発生する. 書込み反射ミラーの表面温度が露点温度より低い場合, 余分な水分は冷たい反射ミラー表面に結露し曇りが発 生する.水蒸気が反射ミラーに吸着すると感光体上に 潜像を書くことができなくなり, Fig. 7に示すように画 像欠損が発生する.書込みユニット位置が定着に近く, ファンが無いことで,自然対流等で水蒸気が書込みユ ニット側に進入する可能性があるため,その流路を特 定し,書込み側に進入させずにマシン外部に水蒸気を 逃がす必要がある.

Fig. 7 Addect of printed image due to dew condensation. 3-2 解析方法 このような画像欠損問題を回避するために,小型温 湿度センサーを機内に多数配置し,その湿度変化から 水蒸気流露を特定した.このセンサーとして, Fig. 8に 示すTDK株式会社製の小型温湿度計(CHS-CSC-18)を マシン本体に装着し,各部の温湿度を測定した.また, 書込み反射ミラー表面温度は,林電工株式会社製の熱 電対タイプJ(TC-J-CO)を用いて測定した.

Fig. 8 Temperature-and-relative-humidity sensor.

3-3 結果

3-3-1 水蒸気流入箇所の特定

Fig. 9に示すように9箇所で温湿度を測定した.

Fig. 9 Arrangement of 9 sensors and 3 thermocouples in a printer.

湿度変化に関しては, Fig. 10に示すとおり1箇所変化 が大きい箇所があり,これはFig. 11に示す遮熱板左, 赤丸位置の隙間からの水蒸気の流入を示している.

Fig. 10 Time variation of humidity of 9 sensing points. The dashed line shows the starting time of the image defect.

(6)

Fig. 11 The inflow position of vapor. 3-3-2 水蒸気流入箇所を塞いだ結果 Fig. 11の赤丸位置の遮熱板形状を変更し,水蒸気が 流入しないように対策を実施した.対策後の相対湿度 測定結果をFig. 12に示す. Fig. 10に示された遮熱板左の湿度変化の大きい箇所 は,対策後は他箇所と同様の湿度値となっており,こ れから遮熱板形状を変更する対策が有効であることが 判った.

Fig. 12 Time variation of humidity of 9 sensing points after the improvement.

3-3-3 書込み部での露点温度と反射ミラー表面温度 との関係(対策前) 反射ミラー表面に熱電対を取り付け表面温度を測定 するとともに,書込み反射ミラー周辺部の温湿度デー タから露点温度を算出し比較した. 露点温度算出に関しては,機内温度(t)と前節までに求 めた相対湿度(RH)から水蒸気圧(e)を以下の式により計 算する. e = RH/100×eS ln(eS) = -6096.9385 × T-1 + 21.2409642-2.711193/100 × T + 1.673952/100000 ×T2+2.433502×ln (T) ここで,飽和蒸気圧eS はJIS Z 88061) に記載されて いるSON-NTAGの式を用いた.また, T : 絶対温度(K) = t (℃) +273.15 である. 次にこの水蒸気圧が露点となる温度(Td)を以下の式 により求める. Td = 13.715×y+8.4262×10-1×y2+1.9048× 10-2×y3+7.8158×y4 ここで, y = ln (e/611.214) である. この露点温度の変化をFig. 13に示す.連続印刷とと もに露点温度は上昇し,反射ミラー温度に接近する. 最終的には交差したときに結露が発生していることが 確認できる.

(7)

Fig. 13 Time variation of the field temperatures, the reflective mirror skin temperature and the dew temperature before the improvement.

3-3-4 書込み部での露点温度と反射ミラー表面温度 との関係 (対策後) 3-3-2にて水蒸気流入箇所を塞いだ対策後の前節と同 様の温度変化をFig. 14に示す. 連続印刷により露点温度は上昇するものの反射ミ ラー表面温度と交差することはなく,また画像欠損も 発生していない.

Fig. 14 Time variation of the field temperatures, the reflective mirror skin temperature and the dew temperature after the improvement.

3-3-5 書込み部での露点温度と反射ミラー表面温度

との関係(2枚間欠モード)

連続印刷による最悪条件でも発生しないことを確認

確認を実施した. 2ページ/ジョブの間欠モードで印刷 した結果をFig. 15に示す.

Fig. 15 Time variation of the field temperatures, the reflective mirror skin temperature and the dew temperature during 2-page job.

通常にユーザーが使用するモードでは反射ミラーの表 面温度に対して,露点温度が接近することはなく,結 露に対して余裕度が大きいことがわかる.

4.

まとめ

熱シミュレーション解析と水蒸気流れ解析を実施した. (1) 熱シミュレーション解析結果は,機内温度が目標 以下を達成しているかを判断することが可能であ り,試作機を作らない構想段階での機内温度上昇 状態を把握することが可能となった. (2) 小型の温湿度センサーを使用することにより,機 内の水蒸気発生箇所の予測が可能となり,結露発 生の条件・場所を明らかにできるようになった. 以上により,熱が伝わりやすく,かつ書込みユニッ トに水蒸気が到達しやすい構成の小型プリンタにおい てもファンレス化を実現した. 参考文献 _________________________________ 1) JIS Z 8806:2001, 湿度-測定方法(2001).

Fig. 1  The sectional view of a laser beam printer  with low height (Ricoh Aficio SP 100SF)
Table 1  Thermal conductivity of parts.
Fig. 6  Temperature color map and velocity vectors  of an air flow during the actual utilization
Fig. 9  Arrangement of 9 sensors and 3    thermocouples in a printer.
+3

参照

関連したドキュメント

Thus, the present study is actually quite different and can be considered as an improvement of [6] and a generalization of [3] to quasilinear (monotone operators in the gradient)

Keywords: continuous time random walk, Brownian motion, collision time, skew Young tableaux, tandem queue.. AMS 2000 Subject Classification: Primary:

The main purpose of this paper is to show, under the hypothesis of uniqueness of the maximizing probability, a Large Deviation Principle for a family of absolutely continuous

As an application, in Section 5 we will use the former mirror coupling to give a unifying proof of Chavel’s conjecture on the domain monotonicity of the Neumann heat kernel for

Then it follows immediately from a suitable version of “Hensel’s Lemma” [cf., e.g., the argument of [4], Lemma 2.1] that S may be obtained, as the notation suggests, as the m A

Our method of proof can also be used to recover the rational homotopy of L K(2) S 0 as well as the chromatic splitting conjecture at primes p > 3 [16]; we only need to use the

The proof uses a set up of Seiberg Witten theory that replaces generic metrics by the construction of a localised Euler class of an infinite dimensional bundle with a Fredholm

The time-frequency integrals and the two-dimensional stationary phase method are applied to study the electromagnetic waves radiated by moving modulated sources in dispersive media..